松本すみ子の「定年準備講座」
 

第26回 セカンドライフの住まいをどうする? <その2           2006年9月26日
 〜現在の住まいで快適生活を実現する方法〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 前回は,「田舎暮らしならJターンのすすめ」や「同じ志を持った仲間が共同で造るシニアマンション」などを紹介した。いずれも,現在の自宅を手放し,住処を別のところに求める場合である。

 紹介し忘れたが,10月13,14日に大手町周辺で「ふるさと回帰フェア」が,11月には池袋で「北海道暮らし・フェア」が開催される。住み替え派には価値ありだ。

◆76%が定年後も引っ越さない

 ところで,故郷や田舎暮らしに戻りたいと思っている人はどのくらいいるのだろう。「定年などで仕事を引退した後,引越しをする予定があるかどうか」を,50歳〜69歳の男女に聞いたところ,76%が「引っ越す予定はない」と答えたという調査がある(2006年8月,日経新聞朝刊掲載)。

 団塊世代は進学や就職で都会に出てきた人が多いので,定年後は故郷に戻ろうとする傾向が強いのではないかと思われがちだが,実態はどうだろうか。親が生きているうちは帰省もしていたが,代が変わった時点で故郷とは疎遠になることがある。長年住み慣れ,家族を育んできた今の家と土地を今さら離れたくないという気持を持つこともあるだろう。しかも,首都圏以外の地域に住んでいる人だって,たくさんいる。

 ということで,今回は,今の住まいを中心にして,定年後を快適に過ごす方法を考えてみたい。要は,自分にとって居心地のいい場所をどう作れるかということに尽きるのではないだろうか。

◆もうひとつの家を行き来してくらす

 青森県が県出身者に行ったアンケートでは,興味深い結果が出ている。定年後に青森県で暮らすことに関心を示した人のうち,23.4%が移住ではなく,「季節ごとに現居住地と青森県とを住み分けたい」と回答したそうだ。

 今の場所から離れたくないが,変化に富んだ生活をしたいということで,別荘やマンションを所有し,週末や季節ごとに住み分けるのである。

 このような二地域居住という暮らし方を選ぶ人が増えている。国土交通省の統計では,3大都市圏(東京,大阪,名古屋)に住む団塊世代の20%前後が複数カ所での居住を希望している。実際,会員で施設をシェアするリゾートクラブの入会者は増えているそうだ。

 2年ほど前,蔵王の麓にある森林リゾートに住んでいる50代と60代の二組の夫婦を訪問したことがあった。団塊世代の50代の夫婦はまだ現役ということもあり,週末に車で通ってくる。雑木林に囲まれた200〜300坪の温泉が湧く敷地に,奥さんの希望でキッチンとリビングを大きく取った山荘を建て,時には友人たちを山荘に招き,交流の機会が持たれる。冬は二人の大好きなスキー三昧で過ごすそうだ。

◆資金的な余裕がない人向けのプランも

  そこまで資金的な余裕はないという人向けのプランもある。タレントの清水国明さんが河口湖で展開している「森と湖の楽園」では,園内の木の上をツリーハウス建設用スペースとして貸し出すプログラムを始めた。

 ツリーハウスとは,木の枝と枝の上に建てた家のこと。広さ4畳半くらいのスペースを確保できるという。子供に戻って,わくわくした気分を味わえるのではないだろうか。価格は1区画50万円。材料費は自己負担。期間は5年だそうだ。住みながら,園で働くこともできる。

 プロの指導を受けながら,週末に訪れ,1年を通じた農業体験ができる「クラインガルテン」という仕組みもある。多くは自治体が運営している。東京の近郊でには,「クラインガルテン栗源」「クラインガルテン八千代」などがある。

 自治体ごとに呼び方が違うので,インターネットで検索するときは,「宿泊型市民農園」でも探してみるといい。延長は5年まで,無理だと思ったら1年で止めてもいいようだ。

◆リフォーム費用は確保してある?

 現在の家で快適に過ごすとなれば,何よりもリフォームが頭に浮かぶ。定年後に大きな出費はしたくないので,今のうち,必要な箇所を修理・リフォームしておこうと考えている人は多いはず。

 特に,大事なのは水まわり(キッチン,トイレ,バスルーム)だ。男性はあまり関心を持ってこなかったかもしれないが,これから毎日自宅にいるようになると,住宅の基本ともいえる,この部分を快適にするだけでも,住み心地が格段に違うことがわかるはずだ。

 筆者は,今年,我が家のマンションのガス給湯器がとうとう壊れ,交換してもらうことにした。ついでに,バスルームも新しいユニットに交換したいということで,見積もりを取った。できればトイレも,台所のシステムキッチンも欲張ったが,すべて頼んだら,最低でも400〜500万円くらいかかってしまう。今回は,トレイとシステムキッチンは断念した。

 しかし,これも,遅かれ早かれ交換の時期が来るだろう。大事になる前に,少しずつ家計簿と相談しながらやっていかないといけない。しかも,今回取り替えたガス給湯器もバスルームも,20年くらいしたら,やはり老朽化する。この家に死ぬまで住むとしたら,最低あと1回分のリフォーム費用は確保しておく必要があるだと自覚した。老後の生活設計に,修理・リフォーム費用を忘れたら大変だ。

◆自分だけの秘密の基地「書斎」をつくる

 自宅で快適に暮らしたければ,自分の居場所を明確に確保したい。リビングルームのソファが居場所とばかりに,いつもテレビの前に鎮座していては,妻に迷惑がられるだけである。定年後,妻が夫を疎ましく思う理由は二つ。ひとつは,視界の中にいつも夫がいること,もう一つは3度3度食事の世話をしなければならないことである。

 そこで,まず,自宅のひと部屋を自分好みの「書斎」または「オフィス」に造り変える。ここは誰にも邪魔されずに,今後の活動計画を練ったり,好きなことに没頭したり,資格取得のための学習や仲間とのサークル活動などの基地とする。つまり,朝食後は,自宅の書斎に毎日通うのである。

 たとえ,妻が自宅にいても,「おーい,お茶」などと言ってはいけないし,昼食は気分転換も兼ねて外食とする。ランチのついでに近所を散策したり,知人と連絡を取って会うのもいい。時には,そのまま飲みに行くことも大いに結構。気分が乗れば残業もする。ここには誰も入れさせない代わりに,掃除は自分でする。実は,こうした場を意図的に作ることが大切なのである。

 この費用は,ぜひ確保しておきたい。どんな書斎やオフィスにするかということも,今から考えておこう。とはいえ,高額な費用だと妻を納得させることはできないので,自分なりの工夫をすることが必要だ。書斎やSOHO向けのオフィス家具を展示してあるショールームを見に行くのもいいだろう。

 書斎というと,前の世代ならマホガニーなどでできた重厚で,いかにも高価そうな家具を選んでしまうかもしれないが,団塊世代は北欧を中心としたスタイリッシュで,リーズナブルな家具も視野に入れてほしい。日本住宅のスペースを考慮して,使い勝手第一に選ぶことが大事だ。東京でいえば,新宿のリビングデザインセンターOZONE,船橋のイケア(まもなく,横浜にもできる)などが参考になる。

 今,団塊/シニア世代には,さまざまな手が差し伸べられている。しかし,どんなふうに暮らしたいかは自分の考え方次第。心の準備もして,セカンドライフを迎えたいものだ。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

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