松本すみ子の「定年準備講座」
 

第23回 定年後に初めて行く旅 <その1>           2006年8月22日
 〜夫婦もいいけど、一人旅もいいね〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 定年後,誰もが確実に実行することがある。それは旅に出ること。人は人生にひとつの区切りをつけたくなった時,旅に出る。日常生活に非日常を挟み込むことで,その後も続く人生を新たな気持ちでスタートしたいと思うからだ。

 今回のコラムでは,定年後初めて行く旅をプランしてみた。旅はこれから何度でも行けるし,行きたいとことは山ほどあるだろう。けれど,定年後初めての旅ならば,思い出に残るようなものにしたいもの。長年支えてくれた妻をねぎらい,今後の二人暮らしを確認するための旅なら,妻を喜ばせる仕掛けも必要だ。

◆団塊世代におすすめの旅

また,定年という節目に,自分自身について,または人生の来し方・行く末をじっくりと考えてみる“一人旅”という方法もある。長い間の宮仕えで磨り減ってしまった自分をまず取り戻す。そんな時間もあっていいのだ。

 この記事は、旅の専門家で「旅の鑑定団」メンバーとして活躍する本多美也子さんに選んでもらった“団塊世代におすすめの旅”を中心に構成してみた。

 今回は,「自分を取り戻す一人旅」,「一人でも夫婦でも行きたい旅」,そして,団塊世代ならではの「テーマや体験にこだわる旅」を紹介する。次回は,「妻を設定的に喜ばせる旅」,「この際ロングステイ体験」,「やっぱり楽チン・おすすめのパッケージツアー」をピックアップしてみたい。

第1章 自分を取り戻す旅 奈良県吉野の「大峯山奥駆け」で修験者になる

 単なる一人旅ではないものを求める人には,奈良県吉野から熊野までを縦走する本格的な修行の道をおすすめする。

 自分でプランしてマイペースで歩くこともできるが,毎年夏に吉野の寺が主催する「奥駆け」は,本当に“駈ける”を体験できる。主に山の尾根を走るが,途中には切り立った岩場を飛び降りるとか,鎖場をよじ登るなどの難所も多数。登山とはまったく異なるものだ。途中棄権も多いそうだ。

 しかし,このような精神と体力を突き詰める体験は男性にしかできないもの。体力も気力も残っている定年直後だから可能なことだろう。大峯山の一部は今も男性しか入れないので,一人旅として,妻の納得も得やすいのではないだろうか。

 実際の体験記は「大峯入峯・奥駆け修行記」で見ることができる。また,『熊野,修験の道を往く―「大峯奥駈」完全踏破』(藤田 庄市著,淡交社)という本も出ている。

 一帯は世界遺産にも登録された日本有数の神聖な地で,大峰山のほか,玉置神社,熊野本宮大社などがある。自身を見つめ直し,生まれ変わった気分になれること確実だ。

第2章 自然の懐に飛び込める「知床トレッキング」

 世界自然遺産に登録された知床。夏はカムイワッカ湯滝で野天風呂,海から眺めるオシンコシン滝,冬は流氷を眺めるガリンコ船など,その自然の大きさと変化のある風景は世界でも特筆もの。どの季節に行っても感動できる場所だ。

 楽しみ方としては自然散策,登山が主だが,場所によって風景は劇的に違い,動植物の生態も変化に富んでいる。とにかく日本とは思えない大自然がすばらしい。

 ただし,ひとりで行くのはヒグマがいるので危険。ベテランのネイチャーガイドとともに楽しみたい。ガイドと行けば,ヒグマに近づくこともでき,自然の楽しみ方も教えてくれる。「知床オプショナルツアーズ」は少人数の観光客を専門にガイドしてくれるし,マッコウクジラやイルカが見られる「知床ネイチャークルーズ」もある。

 情報は事前に「知床自然センター」でチェックして行こう。都会生活,会社生活では決して味わえない自然の神秘,雄大さに触れられ,リフレッシュには最高の場所である。もちろん,夫婦二人旅でもOKだ。

第3章 アメリカンエンターテインメント満喫の旅

 定年後ということで,静かな癒しをもとめる旅を選びがちだが,刺激がほしいという人もいるはず。それなら世界一刺激のある町・ラスベガスはどうだろう。ギャンブルとエンターテインメントに目のない人はもちろん,逆に,ギャンブルは初めてという人にもおすすめしたい。いかにもアメリカ的なスケールと仕掛けは一度見ておく価値がある。

 会社で情報システムに携わっていた人なら,コンピュータの展示会視察ツアーなどで短期間滞在したことがあるかもしれない。しかし,展示会期間は大物スターのショーなどは休みの場合が多いし,ホテル代も高い。この町の本当の魅力を堪能したいなら,通常の時期に最低1週間は滞在したいものだ。

 まず見ものは,超ゴージャスな最高級ホテル。中でも,巨大な湖にダイナミックな噴水,幻想的なショーが楽しめる「ベラージォ」や,ベニスの町を再現した「ベネチアン」などがおもしろい。どのホテルも,それぞれに工夫を凝らしていてユニークなので,「ラスベガスコンシェルジュ」でチェックしてみよう。

 有名歌手やマジシャンによる映画の世界のようなショー,ビルの屋上にあるジェットコースター体験といった,日本ではありえないアトラクションも満喫したい。エージェントにホテルやチケット手配してもらえば,ラクラク個人旅行を楽しめる。とにかく仰天の世界なので,奥さんを連れて行って驚かすのもいいかもしれない。アトラクションやショーだけでなく,奥さんもギャンブルにはまるかも。その場合の責任は取れないが。

第4章 ビートルズの愛した日本をめぐる

 今年はビートルズ来日40年目。若き日にビートルズの曲を口ずさんだ二人なら,彼らの愛した日本をめぐる旅はどうだろう。ジョンやポールの視点で,新しい「ディスカバー・ジャパン」が楽しめるはず。

 旅は東京からスタート。ビートルズ来日時に宿泊したキャピタル東急を訪問してみよう。再開発により建て替えが決定しているので,2006年11月30日をもって解体される。行くなら今がチャンスだ。彼らが泊まったプルデンシャルスイートは38万円。8月は10万円で泊まれる特別プランをやっていたが,残念ながら即完売。レストランで,ビートルズも味わった食事だけでも,いかが?

 ホテルなら,オノヨーコとジョンレノンが過ごした軽井沢の万平ホテル箱根・富士屋ホテル京都・湯の花温泉がある。特に,軽井沢には“ジョン・レノンゆかりの場所や店”が数多くあり,偲ぶには格好の土地。また,京都にはポール・マッカートニーが贔屓にした老舗旅館・俵屋などがある。ちょっとレトロな雰囲気に包まれた老舗の宿めぐりとなるだろう。

 ただし,老舗の旅館やホテルでのマナー,粋なあしらい方などをマスターして,しっかりリードすることがポイント。大人の男としていいところを見せれば,妻に惚れ直してもらえるかも。

第5章 マイカーでの日本縦断で,夫婦の絆を確かめる

 自由気ままな旅なら,マイカーがいい。アメリカでは,妻と二人,キャンピングカーで各地を自由気ままに旅することが,リタイア後の夢だそうだ。魅力は,費用の安さや自由度。ワンボックスカーを購入し,後部座席を居間兼寝室に改造。宿泊は車中泊または温泉素泊まって,地元の名物を食べ,夫は川釣り,妻はカメラやスケッチなど,趣味も生かせる。1年中ぐるぐるまわるようになるほど,ハマる人もいる。

マイカー夫婦旅はカーナビがあるとはいえ,ふたりで計画し協力していかないと,実行するのは難しい。体力にあわせて無理をしないことや,地図を読み,行程を決める計画性が必要だ。事故,故障など,いざというときのための車の知識も身につけておきたい。
  だからこそ,夫婦の絆を確認するには絶好の機会になる。ちなみに,本多さんが出会ったマイカー旅の夫婦は,みな,仲良しだったとか。中には,フェアレディZで全国を旅する夫婦にも遭遇した。愛車と一緒に名所で写真を撮るのが趣味だと話していたそうだ。

 定年を機に妻にも運転免許をとってもらい,二人で全国のドライブ旅行を始めたという 「定年からのマイカー登山ふたり旅」(篠原郁夫著,西日本新聞社)という本も出ている。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

copylight 2004 arias All rights reserved.