松本すみ子の「定年準備講座」
 

第22回 この夏は学習三昧 <その2>           2006年7月25日
 〜楽しくて仕方がないことを見つける〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 ライフワークとは,毎日やっても苦になるどころか元気がでるもの――,それをやっているだけで楽しくて仕方ないものだそうだ。それがある人は幸せ。この夏は,その道にスムーズに移行できるような準備期間にしたいものだ。

 まだ見つからないという人は,ライフワーク発見に向けて,自分自身に刺激を与える期間としよう。今回は,趣味系ライフワークのヒントを中心に紹介する。

◆ものづくりで仕事頭をリフレッシュ

 大量生産・大量消費の反動から,「手作り」への関心が高まっている。最近は職人たちが工房を開放し,今までになかった手作り体験ができるようになった。ここはひとつ,“大人のこだわりの一品”に挑戦してみよう。手作業は無心になれるので,あっという間に時間が過ぎる。数字づけ,理屈づけの仕事の日々にリフレッシュ効果も期待できる。

 例えば,1点もののオリジナルメガネを扱うショップ。この先,メガネとのお付き合いは避けられないことだし,自分で作ってみるという手はどうだろう。本格的な眼鏡職人になるのは無理としても,定年後の趣味が「眼鏡づくり」というのはなかなかオツではないか。

 そこで,まずは小手試し。東京・渋谷にある「アイウエア メビウス」では手作り眼鏡教室を開催している。1回の受講者は5名限定。参加料金はメガネの材料費,製作代込みで1万6800円。受講後は,ちょっとした調整やメンテナンスは自分でできるようになるという。講座は毎月1回開催している。

 男のこだわりグッズの筆頭は,やはり時計だろう。その時計にも手作り教室が登場した。東京・吉祥寺にあるJHA「日本手造り腕時計協会」には「腕時計教室」がある。コースは手作り体験講座,基本講座(組立体験講座),長期製作講座,短期集中講座の4つ。体験講座と基本講座は,2〜3時間ほどで腕時計をひとつ完成させる。受講費は1万円ほどと意外に安い。長期製作講座へ進めば,ムーブメントなどの部品や素材を選んで,本格的な腕時計も作れる。年に年1〜2回は百貨店やギャラリーで展示販売会を兼ねた作品発表会も開くそうだ。

 千葉・海浜幕張にある「くるき亭」でも,「手作り時計教室」を開催している。こちらには,デザイナーコースもある。どちらの教室も少人数でじっくり職人から学ぶスタイル。第2の人生は,頑固で気ままな時計職人というのも悪くない。

 最近,人気が上昇しているのは仏像彫刻だ。「宗教芸術学院」では京都の本部はもちろん,日本各地で講座を開催している。できれば,仏師から習いたいという人には,東京の大仏師・松田瑞雲師が主催する教室などがある。教室に通えないという人には,通信講座も用意されている。教室はインターネットで見つけることができる。仏像彫刻は手作り趣味に加えて,心の安らぎにも効果があると言われている。作務衣姿で彫刻刀を握る日々というのはどうだろうか。

◆趣味の資格を取っておく

趣味の資格はなければならないというものではないが,あれば名刺に記載することもできる。それが話のタネになって,人の輪が広がることもある。邪魔なものではないので,取っておくのも悪くない。

 ただし,本当に興味のあるものを選ぶこと。これで稼げるのではないか,仕事になるのではないかという邪念で選ぶと長続きしない。次から次と資格を取る人は,このパターンが多い。楽しくて続けているうちに,小遣い程度になったというくらいがいいのである。

 アルコール好きには嬉しい資格がたくさん生まれている。「ビアテイスター」「きき酒師」「焼酎アドバイザー」などがそうだ。いずれも,8月中にも受験できる。「ビアテイスター」は講座を受けたその日に受験可能。「きき酒師」と「焼酎アドバイザー」は今からビデオで受講すれば,8月の試験を受けることができる。夏休みのチャレンジには最適だ。

 中高年に人気のあるネイチャー系の資格には,「森林インストラクター」や「釣りインストラクター」などがある。今,受験申し込みを受け付けているのは「緑化文化士(みどりはなぶんかし)」。特級から5級まで6階級あり,特級を3回認定されると「緑花文化士」として認定される。今年の試験は11月12日。今から学んで準備するにはちょうどいい。

 また,マリーンスポーツ系の資格は夏ならではのもの。前々回の「今からはじめるスポーツ(2) 〜楽しみながら健康づくり,社会貢献」で紹介したスキューバダイビングは,経験を積めば高齢者や障害者のサポートやインストラクターとして活躍することもできる。

 同じ趣味を持つ人が集う会に入会して,今から仲間作りをしておくのもおすすめだ。「シルクロード雑学大学」は,その名の通り,シルクロードに興味があり,自転車や徒歩などでシルクロードを訪ねる旅を開催しているサークル。会の目的と活動には「定年後の生きがいが,シルクロードへの旅から見えてくることもある」とあり,シニア世代も歓迎の様子。1日体験入学もできる。2006年8月には,「シルクロード自転車旅行遠征旅行」を決行するそうだ。

◆いつでも学べるeラーニング,そして起業を学ぶ

 講座を受ける時間がないという人でも,パソコンさえあれば,いつでもどこでも,自分のペースで学べるのがeラーニングだ。「世田谷eカレッジ」は,世田谷教育委員会が区内にある国士館大学,駒澤大学,昭和女子大学,東京農業大学と共同で設立した教育システム。

 もちろん,世田谷区民だけでなく,全国各地から誰でも利用できる。受講料は無料から1000円,2000円というものが多く,気軽に学ぶことができる。農大の「焼酎は,こうして造られる」,「竹とんぼ講師養成」,「 面白いほどワカル社会保険(国民年金編)」など,大学や提供者の得意分野を生かしたユニークな講座が多い。

 さて,「自分にとって楽しくて仕方ないものとは仕事だ。一度は事業を興してみたい」という人もいるだろう。そういう人のために,起業セミナーの情報を紹介する。会社法の改正で,1円起業も可能になったとはいえ,定年後に事業を興し,継続するのは難しい。しかし,起業にはどんな準備や戦略が必要か,体験者はどんな人たちなのかを知ってみるのは悪いことではない。何もやらずしてあきらめるよりは,少しでも自分の気持ちの中に志があるなら,この機会に確認してみるのもいいだろう。実際に起業するかどうかは,それから決めればいいのである。

 日本商工会議所は,創業・開業支援のための「創業塾」を全国で開催している。地域によっては,この夏の開催予定もある。今はなくても,今後各地で順次開催されるのでチェックしておいてはどうだろうか。受講料は,平日夜または土日を中心に合計30時間程度の開催で,5000円。自分の気持ちと実力を試せるなら,これは安すぎるくらいの値段だ。

 また,起業家の支援を行っている「WWBジャパン」では,8月26〜27日に起業家スクールを予定している。こちらも,今回逃しても,定期的に開催しているので,受講しやすい。

 今回紹介した講座やセミナーは,ほんの一部。インターネットや図書館などで,情報はいくらでも調べることができる。短い夏だが,その気になれば,これからの人生に向けて密度の濃い休暇にすることもできるのではないだろうか。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

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