松本すみ子の「定年準備講座」
 

第19回 今から始めるスポーツ <その1>        2006年6月20日
 〜楽しくなければスポーツじゃない〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 自由な時間ができて,さて,何をしようかと思ったとき,健康のためにはスポーツも必要かなと思うことがある。ところが,普段から体を動かしていないと,体力や気力,ケガが気になり,「やっぱり,やめとこう」となりがち。めんどうだ,何をしたらいいか分からないという思いも交差する。

 しかし,適度に体を動かすことは,健康にいいだけでなく,憂さ晴らしにもなる。新しい仲間などできようものなら,世界も広がる。青春時代にやっていたスポーツに,もう一度チャレンジするのもいいし,今から新しく見つけてもいい。自分の体力にあったもので,楽しいと思えるスポーツを見つけたいものだ。

 2回にわたり,「これから何かスポーツを始めてみたい」という人のヒントとして,いろいろなスポーツの取り組みと,それを楽しむ人たちを紹介する。

◆いくつになってもできないスポーツはない

 セカンドステージでは,今までも中高年世代でスポーツに取り組む人たちを紹介している。たとえば,夫婦でフランスを自転車ツーリングした工藤さん,中高年ラガーマンが集う「不惑倶楽部」,ホノルルマラソンに挑戦し,次は自転車のホノルルセンチュリーライドを目指す菱沼さんと竹内さん

ラグビーの不惑倶楽部は青春プレイバックの要素が強い。もともと学生時代にラグビーをやっていた人たちが戻ってきて盛んになった。今,同じような理由で,サッカーを始める中高年も増えた。50歳以上の「全国シニアサッカー大会」というのも開催されている。

 どちらも,中高年らしくないハードなスポーツである。できるうちにやっておきたいという願望があるのかもしれない。しかし,ラグビーにもサッカーにも,独自のシニアルールがある。やりたいと思ったら,体力にあったようにルールを緩和すればいいのだ。だから,中高年にできないスポーツというのはほとんどないといっていいだろう。

 とはいえ,やはり,ハードなスポーツは誰にでもできるというものではない。もう少し気軽に,誰でもできるスポーツというのがあってもいい。

◆ちょっと気軽にスポーツ

 スポーツ,スポーツと構えるから,かえってできなくなる。道具やウエアを揃えて,指導本や指南書を読み出したころから,次第に億劫になるということもよくある。まじめな団塊世代は,何事も“ねじり鉢巻”で頑張りがち。若者のように“遊び半分”で始めてもいいのだ。まずは,適度に体を動かすことに意味があるのだから。

 そんな“遊び半分”で楽しめるスポーツが新宿にあった。昨今はボウリングが復活の兆しだが,こちらはビリヤードとボウリングを組み合わせたスポーツ。その名を「ビリボー」という。名前からして分かりやすい。「スポーツフィールバー・ビリボー」のフロアに入ると,中央に小さめのレーンが6台。各レーンの向こうには,これまた,かわいいサイズのピンが並んでいる。すべて標準的なボウリングの1/6のサイズにできているのだそうだ。

 プレイヤーは,ビリヤードのキューと玉をついて,レーンの向こうにあるピンを狙う。ガーターやストライクなど,遊び方もルールもボウリングと同じ。1レーンで4人まで戦える。ビリボーのいい点は,性別や年齢による体力の差に関係なく楽しめること。専用のウエアや靴を用意する必要がないので,すぐにできること。

 若者の娯楽ではないかとバカにするなかれ。マネージャーの影山健二さんによれば,「若い人が話のタネに年配の上司を誘ってきて,その後,その上司が同世代の人たちを連れて遊んでいくというようなこともよくある」とか。結構,人気なのだ。確かに,ボウリングもビリヤードも,団塊世代には馴染みのある遊びだ。大手ゲームメーカーが注目し,今後,ビリボー協会を設立して普及を目指す計画という。もちろん団塊世代もターゲットだ。

 もうひとつ,気軽にスポーツを楽しむための取り組みを紹介したい。街中のなんでもないコンビニ「ファミリーマート神保町店」。しかし,店の奥まで行ってびっくり。ガラスの向こうに4台の卓球台が並んだフロアが見えてくる。そこは,24時間営業の卓球場なのだ。

  

 まさか中高年世代が夜中まで遊ぶことはないと思うが,卓球好きは間違いなく多い。近所にこういう場所があれば,仲間を募って卓球サークルでも作ろうかという気になるのではないだろうか。こうした施設は,若者にばかり利用させておくのは惜しい。定年後に自由な時間ができたら,大いに利用すべきだ。お腹がすいたり,喉が渇けば,すぐに食べ物も飲み物が買える。汗をかいたら,シャツやタオルも調達できる。コンビニが中高年にとっての居場所となる日は近いかもしれない。

◆どうせやるなら新しいスポーツを先駆ける

 ビリボーもそうだが,最近は気軽に参加できそうなユニークなスポーツが次々と生まれている。運動が苦手な人でもできそうなものも多い。大会に参加したり,ある程度上達したら講師になれるスポーツもある。円盤をかごに投げ入れて競う「ディスクゴルフ」,「ブーメラン」,大きなボールを打ち合う「キンボール」,日本生まれでは「スポーツチャンバラ」や「スポーツ吹矢」などがそうだ。

 「スポーツ吹矢」は1998年に誕生し,まだ9年目と新しいスポーツ。だが,「日本スポーツ吹矢協会」の会員は8000名と人気上昇中だ。やり方は単純。矢を入れた筒を口にくわえ,一気に息を吹いて,的に向かって矢を飛ばす。これだけのことだが,日本生まれのスポーツだけに,まず礼に始まり,礼に終わると奥が深い。

 メリットは,簡単にできて健康効果が高いということ。協会の中村一麿呂常務理事は,「まず,集中力が高まります。また,腹式呼吸で腹筋が鍛えられ,内臓の諸器官が活性化されます。便秘が解消する人もいますよ。体の中から健康になるんです」と説明してくれた。20本も吹けば,体全体がポカポカしてくるという。もちろん,点数を競うスポーツだから,ストレス解消にもなる。

 銀座にある練習場では,始めたばかりという真野孝さん(56歳)が,師範の手ほどきを受けていた。営業職であまり健康的でない毎日を送っていたため,体のことを考えて吹矢を始める気になったという。最近,タバコも止めた。「早く上達して,大会に出られるようになりたい」と張り切っている。

 協会では,年に2回の全国大会を開催している。春は有段者に限定,秋は一般の人でも参加できる。初心者は,有段者になって春の大会で成果を競うことを目標とする。さらに,師範になって後輩に教える側にまわる人もいる。

 新しいスポーツの面白さは,競技人口が少ないうちに腕を上げれば,全国大会や国際大会などへの出場も夢ではないということだ。そのいい例がカーリング。トリノ・オリンピックで有名になる前はマイナーなスポーツで,「日本シニアカーリング大会」は50歳以上なら誰でも参加できた。優勝者は日本代表として国際大会にも出場した。どうせやるなら極めたい,成果を出したいという人には,新しいスポーツが狙い目だ。

 次回は,生活習慣病をテニスで解消した人,自身も楽しみながら障害者スポーツのサポーターとして活躍する人などを紹介しながら,シニア世代のスポーツのプラス要素を考えてみたい。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

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