松本すみ子の「定年準備講座」
 

第17回 カジュアルファッション事始め ジーンズ編 <その1>        2006年5月23日
 〜もう一度、Gパンをカッコよく着るために〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 最近,衣料専門店や大手スーパー,百貨店などが,団塊世代向けのカジュアルウェアに力を入れ出したというニュースをよく目にする。確かにショップに行ってみると,たくさんのそれらしい商品が並んでいる。でも,長年スーツに親しんだ身には,何をどう選んだらいいのか,自分に似合うものはどれなのか,イマイチよく分からないというのが本音だ。

 しかし,団塊世代には強い見方がある。それはジーンズ。いや,ジーンズなどという気取った言い方よりも,「Gパン」や「デニム」と言った方が馴染みやすいかもしれない。このGパン,最近は様変わりしている。慣れ親しんだGパンを,最新の流行も取り入れながら,自分たちにふさわしいスタイルで,もう一度はきこなしてみるというのはどうだろうか。カジュアルウェアは,まずジーンズからスタートだ。

 今回は,最新のジーンズの傾向と“はきこなし術”を解説。次回は,団塊男性二人が登場。実際にジーンズショップでお気に入りの1本を選んでもらい,それ合わせたトータルコーディネートを体験してもらうことにする。

◆ジーンズは変化している

 「ジーンズなら,今でもいつもはいているよ」という人は多い。確かに,博報堂が2005年7月にまとめた「団塊世代のファッション実態調査」でも,休日にジーンズをはく団塊世代は50%以上もいると報告している。しかし,問題は着こなし方だ。最近のジーンズはシルエットもかなり変化している。昔と同じはき方しか知らないと,オジサンのさえない休日の労動着スタイルに終わってしまう。

 では,今どきのジーンズはどんなところが違ってきているのだろうか。リーバイス・ストラウス・ジャパンの雨宮恵二さんに聞いてみた。

 「今の主流は,股上の浅いタイプです。ローライズと言われるタイプで,よく若い人がはいていますね。ストンと落として腰骨ではくタイプ。リーバイスでは505のタイプです。もうひとつ,最近人気が復活しているのは定番の501。501は,1890年代にアメリカで生まれた初期のジーンズの復刻版です。ただ,昔のものそのままではなくて,復刻版ははき古したような加工が特徴。わざと色落ちさせて,デニムの元のブルーと白の部分を際立たせたり,ひざの部分などに裂け目をいれたりしています。いかにもはき古したという感じの方がカッコいいんです」。

 確かに,501を見ると,ひざのあたりに穴があいていたり,裾やポケットの部分の糸が擦り切れていたりする。手間ひまがかかっているということなので,擦り切れているものほど値段は高い。1万円前後から3万円,4万円するものまである。はきこんだ結果,擦り切れたGパンを履いていた世代にとって,最初から擦り切れさせたものを高い値段で買うというのは,納得いかない気がする。しかし,これが今どきのおしゃれというものらしい。

 ローライズも穴あきGパンも,団塊世代には抵抗があるだろう。しかし,心配ない。最近のジーンズは種類が豊富なのだ。雨宮さんは「ローライズだと,しゃがみにくかったり,背中が見えてしまったりするので,年配の方は敬遠してしまいますよね。リーバイスには股上が浅いタイプにもいろいろあります。前の部分は股上が浅く,後ろの部分はゆったり目に作ってある502や503はどうでしょう。このタイプだったら,流行を取り入れながらも,はきやすいと思いますよ」。

 503は日本オリジナルの製品で,ベストセラーだという。濃いブルーにパープルの色が不思議にシックだ。また,501は初期のタイプのジーンズなので,股上は深い。穴あき加工の少ないものを選べば,十分はきこなせそうだ。501の特徴はボタンフロント。最近のジーンズはほとんどがジッパーになっていて,ボタンフロントは珍しい。これが好きだという人も多いという。

◆老けジーンズスタイルにご用心

雨宮さんのアドバイスを基にしながら,中高年世代の選び方と着こなしの注意点をまとめてみた。ジーンズははき慣れているはずなのに,なぜかすっきりしないという人は,昔ながらのはき方に固執し「老けジーンズ」になっているのかもしれない。もっとおしゃれに履いてみたいという人は,こんな点に注意してみてはどうだろうか。

・ショップに出かけ,必ず試着する

 サイズが分かっているからといって,試着しなかったり,奥さんなどに適当に買ってきてもらうのはだめ。必ず,自分でショップに出むき,試着してみてから買う。入りにくいと思ったショップも,一歩踏み出しさえすれば,親切にアドバイスしてくれる。

・ジャストサイズを徹底的に選ぼう

 お腹が気になるからといって,大きめサイズを選ぶのはやめよう。シルエットは,ローライズなど,どんな型のジーンズを選ぶかで決まる。自分にあった型をまず選んで,それからジャストフィットサイズを選ぶ。そのためには,何着もトライしてみる。試着を楽しむくらいの気持ちで。面倒,億劫,お店に悪い,恥ずかしいという意識は捨てる。

・裾は長めに

くるぶしの辺りまでしかないジーンズは,オジサンジーンズの典型。ジーンズが床に着くくらい,ちょっと長いかなあというくらいに。裾の長さは,必ずショップの人に相談しながら決めよう。

靴やベルトも手を抜かない

 ファッションはトータルのイメージが大事。ジーンズを選んだら,それに合う靴やベルトも凝ってみたい。靴はスニーカーでもいいが,おしゃれに決めたいなら,茶系の革靴。スエードの靴やブーツもいい。靴もベルトもスーツ用はだめ。ベルトは幅が3.5cm程度の幅広で。バックルが大きめのベルトはお腹も隠してくれるのでお勧め。

・お馴染みのショップをつくって,マイスタイリストにしよう

 Gパンを買ったら,それに合うシャツやTシャツ,ジャケットなどもほしくなる。ジーンズを買うときに,ついでに何点か選んでもらう。さらに,シーズンが変われば,違うアイテムもほしくなる。そういうときには,最初にジーンズを買った店の店員さんの名前を聞いておいて,また,その店に行き相談する。以前に買ったといえば,親切に選んでくれる。何度も行って,他の店員とも親しくなれば,もうマイスタイリスト・ショップだ。

◆フォーマルジーンズという洗濯

 最近のジーンズには,もうひとつの特徴がある。気軽なカジュアルウェアとしてだけでなく,高級化の方向に向かっていることだ。プレミアムジーンズという高級品の出現で,シャツやジャケットを組み合わせ,おしゃれに着こなすことで,ホテルやレストランへの出入りも可能になった。

 そんな傾向を受けて,デニムパンツをオーダーメイドする紳士服店も現れた。銀座テーラースタジオは,ヴィンテージデニムやカシミアデニムなど20種類の生地と,ウォッシュやブリーチなどの洗い加工,ステッチやボタンの色と素材を選んでことができるジーンズバーを設けた。さすがにお値段の方は3万7800円からとか,7万3500円からなどと高額。ちょっと手を出しづらいかもしれないが,自分だけの1本にこだわるおしゃれ派にはお勧めだ。

 ホテルや高級レストランへの出入りが可能なったということは,既存のドレスコードを変化させたということ。ジーンズの影響力は,それほど大きい。あるカジュアルメーカーの社長が,ジーンズはもう終わりで,これからはチノパンだと言っていた。なぜなら,これからおじさん,おばさんがジーンズに復活してきて,おしゃれに履きこなすようになると,若者は敬遠し出すからだという。

 そうだろうか。アメリカで1880年代に生まれ,日本では団塊世代前後が初めて取り入れて,今まで続いてきたジーンズ。それが,そんな底の浅い流行ではないような気がする。むしろ,元祖ジーンズ世代がもう一度履きこなすことで,時代と年代を超えたファッションとして奥深さを増すだろう。

 さて,いよいよ次回は,団塊男性のお二人に,実際に,原宿のジーンズショップに行ってもらい,自分にあったジーンズ選びと,ジーンズを中心とした今どきトータルファッションを体験してもらう。二人は,どんなジーンズを選んで,自分のスタイルを確立するだろうか。乞う,ご期待である。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

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