松本すみ子の「定年準備講座」
 

第14回 起業してみませんか <その2>        2006年3月21日
 〜起業に向けて準備すること〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 その1では,リタイア後の起業で目指したいこと,さらに起業しやすくなった「新会社法」などを紹介した。今回は,起業に役立つ具体的な情報をいくつかピックアップしてみた。

 支援策は国,県,市・町などが開催する公的支援,各地の商工会議所や民間の支援までいろいろある。どんな支援策があって,どれが役立ちそうか。起業準備の第一歩は,その辺りを調べることからスタートしてみてはどうだろう。

◆情報収集で気持ちを後押し

 創業支援策は,実は意外なほどたくさんある。問題は,必要な人が,必要なプログラムにたどり着くのが難しいことだ。情報が分散しているので,どこに行ったら見つけることができるのか,よく分からないという人も多いのではないだろうか。

 また,告知の手段がホームページや公報誌などに限られていたり,発表から応募締め切りまで短期間だったりと,目に付かないうちに終わってしまうこともある。創業・起業の決断は簡単ではない。中高年の独立・起業を促したいなら,もう少し工夫と気配りがほしいものだ。

 と愚痴を言っていても仕方がないので,こまめに支援策を探り出して,使えるものは大いに利用しよう。

 先日,早期退職して「グッドウッドフラワー」という花卉栽培ビジネスを始めた渡辺良樹さん(53歳)に話を聞いた(近々,「本当にやりたい仕事って何」に掲載予定)。渡辺さんは県の農業支援策をうまく活用して創業にこぎつけた一人だ。

 「行政は施策として行っているので,特に最初の例などは失敗させたくないという意識が強い。それもあって,話をよく聞いてくれました。さらに,多少の融通もきかせてくれて,熱心な支援をいただいた」と,そのメリットを語ってくれた。

 リタイア後の起業では,地域の情報が大事である。まず,自宅のある自治体とか,これから事業を起こしたい地域の県や市・区,町で支援策を打ち出していないかどうかを調べてみることだ。この種の情報は,新聞の折込みで配られる市報,区報などの公報誌には必ず掲載されている。

 起業しようか,どうしようかと迷っている時は,いたずらに悩んでいても仕方がない。方法としては逆かもしれないが,先に情報収集して,判断材料のひとつにすることもありだ。週末や就業後のプライベート・タイムは,そのための貴重な時間になるだろう。

◆創業支援策を提供している団体・組織

 今もっとも活発に動いているのは,経済産業省の後援を受けて,財団法人ベンチャーエンタープライズセンターが主催する独立・開業支援プログラム「ドリームゲート」。格闘家のボブ・サップを使い,目立つ宣伝をしていたので,知っている人も多いのではないだろうか。Webサイトでは,起業講座や先輩起業家の体験談,全国の支援機関・情報など,多彩な情報が提供されている。創業支援情報のポータルサイトとしても便利に使えそうだ。

 ちなみに,現在募集中の支援策は,「全国支援情報検索」で地域別に検索することができる。創業時に必要なオフィスを一定期間格安な値段で貸し出すインキュベーション(創業支援)施設情報,融資に関する情報,セミナー・イベントや創業塾も調べることができる。また,「起業家100人挑戦日記」というブログでは,起業家の素顔や日常を知ることができる。

 ただし,やはりすべてが網羅されているわけではない。例えば,下記に紹介する東京都下の情報は見つけることができなかった。あるのかもしれないが,たどり着けなかった。そういう支援策は,地方自治体が地元のみを対象に行っているものや,NPOが手がけているものに多い。この場合は,自治体や市民活動の公報誌の方が見つけやすい。

 

 民間やNPOでも創業支援を行っているところはある。NPO法人「IAIジャパン」は,企業などで専門的な経験を積んだメンバーが集まって,創業のサポートをする組織だ。また,民間では「市民バンク」の活動が知られている。

 「市民バンク」は,「担保がなくても,実績がなくても,地域に貢献したいという明確なビジョンとプランがあれば,融資を行う」という方針で注目された。活動がスタートしたのは1989年。市井の起業家を支援する仕組みも意識も希薄だった時代には貴重な存在だった。これまでに100件,5億円もの融資実績があるという。

         
  サイバーシルクロード八王子・ビジネスお助け隊      多摩市東永山創業支援施設

 民間やNPOでも創業支援を行っているところはある。NPO法人「IAIジャパン」は,企業などで専門的な経験を積んだメンバーが集まって,創業のサポートをする組織だ。また,民間では「市民バンク」の活動が知られている。

 「市民バンク」は,「担保がなくても,実績がなくても,地域に貢献したいという明確なビジョンとプランがあれば,融資を行う」という方針で注目された。活動がスタートしたのは1989年。市井の起業家を支援する仕組みも意識も希薄だった時代には貴重な存在だった。これまでに100件,5億円もの融資実績があるという。

◆起業家養成セミナーを受けてみる

 起業には,どんな準備が必要なのだろうか。ほかの人は,どんなビジネスで創業しようとしているのだろうか。それを知るには,起業家養成セミナーに参加するという方法がある。情報が手に入りやすくなるし,終了後も何かと情報を送ってくれる。さらに,同じ志を持った仲間と語り合えるということは心強い。ここで紹介したセミナーは,定期的に開催されているものが多いので,時々チェックしてみる価値がある。

職業能力開発総合大学校 起業・ 新分野展開支援センター 起業家養成セミナー
東京都中小企業振興公社
東京商工会議所創業支援セミナー
日本商工会議所 創業塾
神戸商工会議所KCCI創業塾

 また,「サービス産業創造フォーラム」,「ジャパン・ベンチャー・アワード」など,創業・起業に関するイベントが開催されることもあるので,参加して業界の様子などをリサーチすることも必要だ。

◆リタイア後の起業の心得

 その1では,リタイア後の起業は社会貢献的な発想が必要ではないかと書いた。それは,事業をさらに深みのある,意義あるものに変える可能性がある。そのほかにも,起業にあたって,あらかじめ考えておいた方がいいことを二つばかり補足したい。これは,特に,組織に長く所属していた人が陥りやすい考えである。

元の会社には頼らないという覚悟

 会社にいた頃の威光は,定年とともに消え失せる。頭の中では分かっていても,そのツテに頼りたくなる。起業アドバイスの中には,今までの経験と業績,人脈を生かして,退職後は元の会社から仕事をもらうのが一番などと書いたものがある。

 しかし,筆者の見てきたところでは,それでうまくいった例は稀だ。元の部下を訪ねても,うっとうしがられるだけ。シニアのゆるやかな起業とはいえ,新規の顧客を開拓すること,あくまでも新しい世界で勝負することが大事。そうした覚悟がなければ起業は難しい。

安易に女房を使うべからず

 自分が事業を起こしたら,妻が手伝うのは当然と信じて疑わない人は多い。細々した事務処理はもちろん,経理のようなことまで,何かというと「女房にやらせる」と言う。たいてい,妻はただ働きだ。もちろん,長年連れ添った夫の始めたことでもあるし,妻はできる限りの手伝いはしたいと思っているだろう。しかし,それを当然のことだと思うのは勘違いだ。

 こういう例では,次第に,奥さんに不満がたまってきて,うまくいかなくなる。夫は社長でいい気なものだが,妻は無給の事務員でしかないからだ。会社で部下を使っていた時の感覚が抜けていない。所詮は妻に甘えたビジネスでしかない。一人で事業をするという気構えを持つ。そうでなければ,十分ではないにしても,妻にも給与を払う。こんな覚悟も必要なのだ。

 最後に,参考になる経営者のためのメールマガジンがあるので紹介したい。それは『がんばれ社長!今日のポイント』だ。武沢信行さんというコンサルタントが毎日配信しているもので,内容の濃い情報や考え方を提示してくれる。なにより,発信者自身がのびのびと行動し,理念を語る姿勢がいい。事業を起こそうと考えていない人にも面白く読めるので,おすすめだ。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

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