松本すみ子の「定年準備講座」
 

第11回 健康を考える <その1>        2006年2月14日
       〜この頃、どんなもの食べてます?〜

 
*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。
 

 充実した第2の人生の実現に必要なものは「健康」。健康を保つための方法はいろいろあるが,意外にないがしろにされがちなのが,毎日の食事である。

 人間は食べなければ,生きていけない。ただし,何も考えずにお腹を満たすために食べればいいというものではない。歳をとればとるほど,どんなものを,どのくらい摂ったらいいかの配慮が不可欠となる。うっかりしていると,たちまち生活習慣病の危険が押し寄せてくるからだ。

 しかし,健康のためとはいえ,美味しいと思わないものを我慢してまで食べたくはない。食べ物の嗜好は,人によって違う。健康のために野菜中心の食事がいいと分かっていても,肉料理やこってりした献立が好きな人もいるのだ。理想は好きな物も食べながら,健康でいること。今回は,そんな“食”の視点から健康について考えてみた。

◆やっぱり不安、自分の健康

 生活習慣病への不安は30代から始まる。オムロンヘルスケアの「生活習慣病に関する意識調査」によれば,調査した30代〜50代の約1300人のうち,4人に3人が『内臓脂肪』の蓄積に不安を感じているとか。さらに,2人に1人が最近1年以内に太ったと思い,そのうち4人にひとりが過去5年間で5kg以上太ったと回答している。

 この調査では,もう一つ興味深い結果が報告されている。それは,「内臓脂肪」と「メタボリックシンドローム」という言葉に関する認知度だ。「『内臓脂肪』は最近よく聴くけど,『メタボリックシンドローム』って,何だ?」と思った人も多いのではないだろうか。

 調査結果もそのとおりで,「内臓脂肪」を知っている人は74.9%もいたが,「メタボリックシンドローム」を知っている人はたったの2.9%。「メタボリックシンドローム」とは,「肥満に加えて,高血圧,糖尿病,高脂血症といった,動脈硬化を進め,心筋梗塞や脳梗塞などの疾患を発症させる危険因子を複数持った状態のこと」を言うのである。

 「メタボリックシンドローム」の診断基準は,以下のようになっている。

    1.ウエスト(腹囲):男性は85cm以上,女性は90cm以上
   2.上記1の基準に加え,次の3項目のうち2項目以上該当した場合
      ・脂質代謝異常:中性脂肪が150mg/dL以上 または,HDLコレステロール値が40mg/dL未満
      ・血圧値:130/85mmHg以上
      ・血糖:空腹時血糖値110mg/dL以上

 これらの数値は,健康診断を受けていれば,だいたいわかる。自分が「メタボリックシンドローム」かどうか,健康診断の結果を基にチェックしてみてはどうだろうか。

 ちなみに,適正体重は,次の式に当てはめた数値が18.5〜25の範囲内。それ以上数値が高いと肥満,低いと痩せ過ぎとなる。

    BMI = 体重(kg) ÷ [身長(m)]2

◆不安はあるが、まあいいか

 確認するまでもなく,「要再検査」という結果を受け取っているという人もいるだろう。その診断をもらった人は,ちゃんと再検に行っただろうか。実は,行かない人が多いのだ。

 筆者が以前勤務していた会社でも,病院はきらいだとか,仕事が忙しいとか,なんだかんだと理由をつけて,再検に行かない人が少なくなかった。事実上,無視という感じだった。当然ながら,何も改善せず,翌年の検診でも同じ結果が出る。

 再検しない人が多いということを証明する調査もある。医薬品メーカー・ノバルティスファーマの「生活習慣病意識調査」には,「要再検査」や「要受診」の指導を受けても,そのまま放置し受診しなかったと答えた人が3割もいたと書いてある。理由は「多くの人が『生活習慣病に対する不安はあるが,自分はまだ大丈夫だろう』という意識を持っている」からだそうだ。

 生活習慣病のやっかいなところは,初期の段階で自覚症状がほとんどないことだ。せいぜい「太ったなあ,ダイエットしなければ」と思う程度である。そうして油断している間に進行して行く。翌年も同じ結果だったらいい方で,さらに悪い数値が出たり,自覚症状が出てきたら,大変なことだ。再検は,必ず受けよう。いくら忙しいといっても,命より大事な仕事など,この世にはない。

◆一昨日、昨日、何食べた?

 生活習慣病の予防には,食事と運動への配慮が欠かせない。朝は寝不足で食べないままに,昼の食事はラーメンやそばで終わらせ,夜の宴席でアルコールとカロリー過剰な食事。これでは,フィットネスクラブに通ったり,ジョギングをしたり,サプリメントを補給しても本末転倒。さらに,タバコを吸っていたら最悪だ。

 自分の食事状況がどんなものかを知るために,一昨日,昨日と食べたものを思い出してみよう。まず,6食分を書き出してみる。思い出せないという人は,肉体だけでなく,脳を鍛えることも考えた方がいいかもしれない。

 食べたものを書き出したら,図の「食事バランスガイド」に当てはめてみよう。「食事バランスガイド」は,1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストにしてある。厚生労働省と農林水産省が2005年6月に作ったものだ。


 生活習慣病の予防には,食事と運動への配慮が欠かせない。朝は寝不足で食べないままに,昼の食事はラーメンやそばで終わらせ,夜の宴席でアルコールとカロリー過剰な食事。これでは,フィットネスクラブに通ったり,ジョギングをしたり,サプリメントを補給しても本末転倒。さらに,タバコを吸っていたら最悪だ。

 自分の食事状況がどんなものかを知るために,一昨日,昨日と食べたものを思い出してみよう。まず,6食分を書き出してみる。思い出せないという人は,肉体だけでなく,脳を鍛えることも考えた方がいいかもしれない。

 食べたものを書き出したら,図の「食事バランスガイド」に当てはめてみよう。「食事バランスガイド」は,1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストにしてある。厚生労働省と農林水産省が2005年6月に作ったものだ。

 そこには,1日に必要な食事を数値で示してある。例えば,ご飯中盛り1杯は1.5。1日に適正な主食は5〜7だから,ご飯は3杯から4杯分を摂ればいいということになる。主食,副菜,主菜,牛乳・乳製品,果物に大分類されている。

 当てはめてみれば,自分はどの部分が不足しているか,あるいは過剰かを知る目安となる。ただ,現代人は忙しく,接待の日もあるし,自分の思うような食事ができるとは限らない。毎日,この数字を達成することは難しいので,2日か3日分の平均で達成できるようにすればいいのではないだろうか。

 ただ,「食事バランスガイド」の難点は,酒類が明示されてないこと。大人の食事に酒類はつきもの。このあたりは改善の余地ありだろう。

 そこで,酒類のカロリーチェックは,「サラリーマンSTYLE.COM」のhttp://www.salaryman-style.com/health/diet/cal.htmlを参考にするといい。「おむすび換算カロリーブック」は,約160kcalのおむすびに換算して何個分に当たるかで,外食時のカロリーを判断しようというもの。これも便利に使えそうだ。

◆案外、洋食好きな団塊世代

 玄米や有機野菜などの日本の伝統的な食事をとる「マクロビオテック」という食生活が注目されるようになってきた。確かに,体には良さそうだ。しかし,体にいいからといって,いつも豆腐やひじきの煮つけのようなものばかりでも飽きてしまう。たまには,イタリア料理,中華料理にステーキ,丼ものなども食べたいのが人情。

 また,歳をとってからは粗食がいいといわれる一方で,栄養不足で体力が弱ったり,病気を引き起こす危険性が高い。むしろ,良質のたんぱく質を適宜とる必要があるとも言われている。

 もともと団塊世代は洋食に馴染んでいる。学生時代,学校の周りには安くてボリュームのある洋食屋がたくさんあった。マクドナルドが日本に進出し,三越に第一号店を開いたのは1971年,ほぼ団塊世代が学生の頃である。会社に入ってからは接待も盛んで,食の経験は多彩で豊富だ。

 筆者の周りにも,今風のフランス料理より,昔からのこってりしたフランス料理が好きだという人や,ご飯よりもパンが好きだという50代が少なくない。案外,洋食は好きなのである。最近は,そんな人たちに向けて工夫された食事や食材が出始めている。

 今,話題なのは,フランス料理のアンチエイジング・メニュー。サーモンやオリーブオイル,前菜に使う香草には老化や認知症を防ぐ成分を含んでいるなどという研究に基づき,フランス料理で介護食や治療食に取り組もうという動きが活発だ。例えば,「キヨズキッチン」,「ユリス麻布十番」などのように,体にいいメニューを売り物にするフレンチレストランも出てきている。

 極めつけは「360kcalのフランス料理」を広める「知食の会」。コースあたり(一皿ではない)360キロカロリー,食塩2.2グラムに調理したフランス料理や懐石料理を楽しんでいる。主宰者は糖尿病で失明の危機までいった人物。それでも,美味しいものを食べたいと始めた。

 豊かな食の経験を持つ団塊/シニア世代に向けて,今後は,健康に配慮しながらも,食べることの楽しみを満足させる食物や食材がたくさん出てくるだろう。第2の人生の食は豊かで楽しくなるはずだ。それを長く楽しむには,自分で自分をバランスよく保つ自己管理が大切である。

(松本すみ子=アリア/シニアライフアドバイザー)

     
 

copylight 2004 arias All rights reserved.