松本すみ子の「定年準備講座」
 

第1回 定年前のウォーミングアップ<その1>                              2005年10月18日
       〜生涯労働時間と定年後の自由時間を知る〜

 

*このエッセイは、日経BP「団塊世代のための定年準備講座」に掲載したものです。

 

◆豊かなセカンドライフを実現するために

 団塊世代には、60歳定年の扉が目の前に迫ってきた。さすがに、第2の人生をどう過ごしたらいいかと考え始める人が多いらしく、各地で開催される定年講座は大人気。しかし、一番多いのは、表面は気にしてないような素振りを見せながら、実は、内心落ち着かないという人ではないだろうか。

 「何をどうしたらいいのか検討がつかない」。「そのために行動するのも面倒だ」。「その時になればなんとかなるだろう」。

 サラリーマンには確実に定年がやってくる。それなら、突然、その日を迎えるのではなく、体力も気力もある今のうちから、少しずつ準備する方が良いに決まっている。今までの職業人としての来し方を見つめ、新たな人生の行く末に思いを馳せ、自分なりの人生プランを作る。

 これは、会社の事業プラン策定に匹敵するほどの重要な仕事だ。そして、このプランは、基本的に誰にもクレームや訂正を迫られたりすることはない。考えようによっては、楽しい作業なのである。

 今回からスタートする「団塊世代のための定年準備講座」では、今後順次、年金、生涯学習、健康、仕事など第2の人生のために必要なテーマを取り上げていく。自分なりの生き方をイメージすることができるかどうかが、豊かなセカンドライフに踏み出すための第一歩。この講座が、その一助になってくれれば嬉しい。

◆テレビドラマも定年後の行き方に注目

 今、「定年後の生き方」というテーマは注目の的だ。10月から、これを扱ったテレビドラマが、同時に二つも始まった。一つはNHKの「理想の生活」(月〜木、午後11:00〜11:15)、もう一つはテレビ朝日「熟年離婚」(木、午後9:00〜9:54)。どちらも、自分が思い描いていた定年後の生活とはかけ離れた現実を突きつけられ、戸惑いながらも、新たな人生を模索するリタイア男性の姿を描いている。

 主人公は、どちらもまじめな仕事人間だ。定年後の計画も、彼らなりに一生懸命考え、家族にもよかれと思って進めたものだった。しかし、その計画には重大な欠点がある。それは、家族の誰の意見も聞かずに、独りよがりですべてを決定してしまったこと。しかも、主人公たちは、周りの状況どころか、実は自分自身についてすら、きちんと考えてはいなかったというような内容だ。

 定年まで何もせず、定年を迎えたとたん、よく考えもせずに何かに走る。時間は潰せるが、何か物足りない。この状況が一番つまらない。そこで、今回と次回は、自分と自分を取り巻く大切なものを見直し、足元を固めて、新しい人生に踏み出すためのウォーミングアップを行ってみたい。ガチガチの仕事頭から脱して、柔らか頭に戻っていくための第一歩である。

◆今まで仕事に費やした時間は?

 まず、定年後の人生で自分が持つ時間を確認してみよう。よく「有り余る時間を持て余す」などと言われる。だが、その「有り余る時間」とは、いったい具体的にどのくらいのものなのか。

 でも、その前に。今までの人生で自分はどのくらいの時間を仕事や会社に費やしてきたかを先に計算してみたい。次の数字は、大卒後22歳で入社して、60歳で定年を迎えた標準的な人の生涯労働時間だ。1日8時間労働に、通勤時間を2時間として計算してある。休日を除いた年間労働日数は250日とした。

 すると生涯労働時間は,10時間×250日×38年間=9万5000時間となる。これは残業や休日出勤などをしなかった場合の数字。各自、自分がしてきたと思う残業時間などを加えてみてほしい。また、通勤時間は2時間ではきかないという人もいるだろう。たいていの人は、この数字より多いのではないだろうか。10万時間にも達するかもしれない。

 ちなみに、勤務日1日の自由時間はたったの3.5時間しかない。会社帰りに一杯飲んだら終わりという時間である。計算は以下の通り。

    1日(24時間)−睡眠時間(8時間)−生活基本時間(2.5時間)−通勤時間を含む労働時間(10)=3.5時間

*生活基本時間とは、食事、入浴、トイレなどに要する時間

◆「有り余る時間」って、何時間?

 では、有り余る時間=定年後の自由時間はどのくらいか。ここでは、60歳〜80歳まで生きたとして計算してみる。

    1日(24時間)−睡眠時間(8時間)−生活基本時間(2.5時間)=13.5時間

 13.5時間×365日×20年=9万8550時間になる。先に計算した生涯労働時間は9万5000時間。定年後の自由時間は9万8550時間。これから先の自由時間は、今まで働いてきた38年間の労働時間にも匹敵するのである。十分過ぎるほどの時間があるということがわかるのではないだろうか。

 これだけの時間を所有している人は、今から新しく何かを始めて、ある程度のレベルに達することも不可能ではない。その時間を、隠居のような状況でおくるか、最後の人生の仕上げにかかるか、この差は大きい。

◆自分の気持ちを見つめる

 定年を迎えようとしているあなたの、現在の心境はどんなものだろう。次の中から、当てはまるものをいくつでも選んでみてほしい。定年は自分を見つめるいい機会だ。逃げずに、その気持ちと向き合うことで、次の展開が生まれる。

 ・漠然とした不安を感じることがある
・趣味がない、腕に覚えもない
・今は、あまり考えたくない
・しばしの休養が必要だと思っている。
・休養しても、その後、どうするかが不安
・時間をもてあますのではないか、濡れ落ち葉にはなりたくない
・さあ、好きなことをやるぞ!
・何かしなければ。しかし、何をしたらいいか
・今度は自分のために生きよう!
・ライフワークを見つけたい
・卒サラ前に何かみつけないと、と思うと焦る
・今から何かやっても、もうたいしたことはないな
・その他(具体的に:                         )

その2」に続く

     
 

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