コラム『松本すみこのシニアライフ』 No.24

 

私のために作ってくれた・・・

2017年3月30日

 
 

オーダーが普通だった時代

私が子供の頃、父のスーツはオーダーするものでした。近くのテーラーの主人が父の寸法をいろいろと測って、ぴったりのスーツを作ってくれるのです。父は国鉄職員で、官舎に住む、ごく普通のサラリーマン。

オーダーの理由は、当時、吊るし(出来合いのものをそう呼んだ)のスーツなどはあまり売ってなく、あったとしても、ほとんどは粗悪品だったからです。オーダーが普通だったのです。

とはいえ、オーダーは高くつくし、時間がかかる。1970年代頃になると、紳士服でいえば、青山、AOKI、コナカといった大量生産方式の価格破壊型チェーン店が生まれ、多くの人に早く安く提供する企業が生まれました。

ちなみに、まもなく終わってしまうNHK朝ドラ「べっぴんさん」の主人公・すみれの姉の夫はレナウンの創始者、その弟・栄輔はVAN創設者・石津謙輔がモデルだそうです。

VANやレナウンが成長したのも1960〜1970年代でした。VANは70年代後半に倒産してしまいましたが。

この時代は紳士服に限らず、同じものを大量に作って、安価に提供するということが、日本でのモノづくり、経済の基本、目指す方向でした。おかげで、誰もが安く簡単に手に入れられるようになりました。だだし、悲しいかな、それは画一的なものでしかなかったのです。

時代は移り、大量生産・安価な商品は中国や他のアジア諸国にかなわなくなってきました。消費者の意識も変化しました。すでに多くのものを所有してしまった人達は、そういう商品に飽き足らない思いを抱くようになったのです。

どんなに安くても、どんなにいいと言われても、どこにでもあるものはいらない、自分だけのものが欲しい。もしも同じものだとしても、わざわざお金をかけて、他人とは違うものに作り変えたいという欲求が働き始めました。

例えば、スマホや携帯電話。メーカーが提供するハードは大量生産の似たような形ですが、持ち主はそれにお気に入りのカバーを掛けたり、ビーズやクリスタルで装飾を施したりして、自分だけのオリジナルにしようとします。量販店やネットショップに、たくさんの周辺機器やアクセサリーが並ぶのはそういうことでしょう。

シニアこそオーダー!

これから、時代はオーダーに戻っていくのではないでしょうか。例えば、スーツは男性に限らず、女性用スーツもオーダーで作れるところが増えてきました。働く女性が増えてきたからです。靴やドレスのオーダーも可能です。

車も多彩な色柄から選べる車種が出てきました。大好きなツーリング用自転車も車体やハンドルの色をオーダーするこだわり派シニアが増えました。眼鏡だって同様です。

もちろん、昔のオーダーとは違います。もっとも違うのは価格。あるメーカーの女性用オーダースーツは48,000円。既製品とさほど変わりません。ドレスのオーダーは昔ならオートクチュールです。庶民にはとても手の届かないものでした。

しかし、今は、ちょっと無理をすればなんとかなりそうな値段のものがたくさんあるのです。

そして、ついに、格安大量生産メーカーの代表のようなユニクロでさえ、男性物に引き続き、袖丈や着丈、色をセミオーダー感覚で選べる女性向けジャケットを発表しました。価格はなんと1万円ほど。

オーダーなのに、なぜ、安くできるのでしょうか。それは、ネットを使うからです。これが昔のオーダーとは違う点です。

この手法は、今後、様々なものを一人一人の要望にあったオーダー製品に変えていく可能性を持っています。これは、いろいろなものが不便で使いにくくなっていくシニア世代にとっては、願ってもないことです。

シニア世代がものを買わないのは、買いたいものがないという一面もあります。なぜ買いたいものがないか。もう何もほしくないのではありません。自分に合ったものが見つからないからです。

でも、自分にあったものがオーダーできるとしたら、自分だけのものを作ってくれるとしたら、どうでしょうか。 私のために作ってくれた・・・という満足感。

モノだけでなく、サービスも同じです。例えば、旅では、ダイナミックパッケージという 航空券と宿泊を自由に組み合わせて、オリジナルの旅を作れる新しい仕組みを使うシニアたちが増えています。

人生経験を積んだシニア世代はこだわり派です。そんな世代の誰にでもあった製品を作ることは不可能です。オーダーは、シニア市場で成功する一つの方法だという気がします。ものづくりの世界は、オーダーシステムをどんどん拡大してほしいと思います。

そして、シニア自身もこんなものがほしい、必要だと主張する必要があります。それこそが、シニア世代が消費者として産業の活性化に役立つ方法でもあるのです。

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