コラム『松本すみこのシニアライフ』 No11

 

シニアと学生、ひとつ屋根の下

2016年3月24日

 
 

ネットで「ひとつ屋根の下プロジェクト 大おやつ大会&活動報告会」という案内を見つけました。“東京・文京区のシニアの持つ空き部屋を、学生が借りて共生するプロジェクト”とあります。

運営母体は「NPO法人街ing本郷」。文京区の商店主や区民などで構成されている町おこし組織です。代表理事の長谷川大さんは地元のお魚屋さんです。
→ http://m-hongo.com/

以前、やはり、独居シニアと学生の同居を推進する活動を行っている「NPO法人リブアンドリブ」の石橋^子さんからお話を伺ったことがありました。バルセロナで始まった活動は、パリなどの欧州諸国ではそれなりの成果をあげたようですが、日本ではなかなか進展しないと、難しさを語っていました。
→ http://liveandlive.org/

そんなことを思い出し、文京区の活動では成果が上がっているのか、どんな成果か、興味をそそられ、参加してみることにしたのです。

会場は文京区立本郷小学校。余談ですが、私は学生時代に、この近くに住んでいたことがあります。私がいた頃は、真砂小学校という名称でした。少子化の影響で統合したのでしょう。それはさておき。

文京区のひとり暮らし高齢者世帯は全体の39%、65歳以上の夫婦のみ世帯は21.4%、合計すると60%以上です。この数字から見れば、「ひとつ屋根の下プロジェクト」はシニアの孤立や不便解消策として、また、文字通りの文京地区として、学生の高額な家賃負担、遠方からの通学などの問題解消策としては効果的なプログラムといえます。

プロジェクトは2014年頃から、地域の人々やシニアから意見を聞きながら、仕組みやルールを作りから始まったとのこと。まず、「ひとつ釜の飯」や「おやつ会」という交流会で、シニアと学生の接点を増やし、次に、短期間ながら、募集した数組にモデルケースとして同居してもらい、結果を話し合いながら進めてきました。

本郷といえば東大です。「学生スタッフには2人の東大の学生が参加しており、そのうち1人は、実際にシニアのお宅に住んでいるとか。

メリットとして、シニア・学生共に挙げたのは「人の気配があること」。シニアにとっては「力仕事など自分で難しいことを頼めるのがいい」、学生にとっては「知らないことを教えてもらって、新しい知識や体験を得られた」が挙げられています。

しかし、共に暮らすことは、やはり簡単ではないようです。

多くのシニア世代は、他人が家に入り込むことを好まない傾向があります。介護ヘルパーでさえ、拒む高齢者がいます。また、今まで好きなように暮らしてきたのに、余分な気遣いが負担だという声もあります。この報告会でも「ひとつ屋根の下は難しいが、交流はしたい」というシニアの発言がありました。

シニアが求める同居学生への条件として、ゴミ出し、町会活動への参加と手伝い、週に数回の食事や団らんとありますが、これを負担に思う学生も多いでしょう。告知がうまくいっていないこともあり、関心を持つ学生は多くないということも、今後の課題として報告されていました。

むかしは、普通の家に、学生が間借りすることは珍しいことではありませんでした。高校時代、仙台にあるわが家の近くのお宅に、東北大学の学生が下宿しました。

奥さんは、学生をわが子同然に世話し、ついには娘さんを嫁がせるのに成功しました。最初から、それを意図していたかどうかは別として、こういう例も少なくはなかったのです。

しかし、家は戸建てから2LDK、3LDKのマンションになり、核家族が増え、プライベートの重要性が叫ばれ、ライフスタイルやコミュニケーションの形は変化しました。このプロジェクトはなかなか難しいな、でも、頑張ってほしいな、どこかに突破口はないものだろうかと思いながら、会場を後にしました。

これから、ますます一人暮らしが増えます。ひとつの家にこだわることなく、ひとつの町内やひとつのマンションに多世代が共に暮らし、プライベートや自由を保ちながら助け合う。そういう形が、今後の共生スタイルの姿ではないでしょうか。そういう意味では、地域ぐるみで頑張ろうとしている長谷川さんたちの取り組みに、大いに期待したいと思います。

 
 
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